Moving Auricle Device

Moving Auricle Device

サウンドアート|2023

佐野 風史

慶應義塾大学

機械耳介によって手に入れた「聞こえ」を変える能力は、音への意識にどのような変化が生むだろうか? 本作品は、本来は自力で開閉することのできない人間の耳介の代わりに動き、聞こえに変化を生むMoving Auricle Deviceを使用して制作された、音の「聞こえ」の変化に耳を傾ける音響体験である。耳介とは、耳全体の内で、外に出ている部分のことである。形状を変化させることで、音の聞こえてくる方向を変えたり、音にフィルター効果をかけたり、手をかぶせることで音の不思議な反響を生み出すことができる。しかし、人間の耳介には大きく形状を変えられるほどの筋肉はない。そこで、本来は自力で開閉することのできなかった人間の耳介の代わりに、開閉を行うデバイスを用いて人がフリーハンドで耳介を開閉するような経験をできるようにすることで、装着者の「聞こえ」に変化を与える。人と機械が協働し新たな能力を手に入れたとき、どのような感覚になるのかを模索した。

審査員コメント

  • 猫や犬のように音のする方へ耳を動かして聴くことができたらなら、どんな音の世界が広がるだろう、そんな想像に導いてくれる作品でした。そもそも人間は耳を動かすことはできないのか?という問いは実は動かせたようです。視覚に頼りすぎてしまったために耳が退化してきたとも言われています。人間の身体拡張の分野にも通じるこの作品ですが、私たちが長い年月をかけて失った機能の存在を思い起こさせてくれる作品でもあると思いました。デザイン的にも優れており体験全体を作り上げる能力がある方だなと思いました。この作品によってどんな私達祖先の記憶にたどり着くのか、ぜひいつか体験したいです。

    滝戸 ドリタ アーティスト/ディレクター/デザイナー