あなたが誰で、どんなに孤独だろうとも

高校卒業を機に親元を離れ、それから長らくを経て一昨年の2020年に帰郷した。過去の思い出と対峙し始めたこと、新しい人との出会いを通じて、高校生の時の私と両親の関係、帰郷した私と目の前にいる両親関係の間で変化が生じていることに気づき、そして同世代・同性の友人との会話の中で、「親しい人との間に生じる壁」「孤独」を、それぞれ抱いていることにも気づかされた。この作品は、そうした「親しい人との間に感じる孤独」抱える同世代・同性の友人たちのインタビューをもとに制作した。それぞれの「孤独」はとても個人的なものでも、翻ってそれが社会に生きる人々にも共通する「孤独」につながるのではないかと思う。作品のタイトルはアメリカの詩人メアリー・オリバーの「Wild Geese（野生の雁）」から引用し翻訳した。本作では雁ではなくツバメが彼女たちをその孤独から、社会から、今まさに立っているその地からのつながりを解き放つ。彼女たちの「孤独」は、彼女たちが携えて（あるいはどこかで解消して）生きていくものだが、彼女たちの、そして観る人それぞれのための、祈りとしての作品である。