わたしのトーチカ

わたしのトーチカ

アニメーション|2021

石舘 波子

東京藝術大学大学院

アート部門 GOLD

ART DIVISION GOLD

PARTNER AWARD

作者Webサイト https://www.namikoishidate.com/

潜水服は、水中の世界の中で唯一ボンベがないと生きられない。我侭な女の子や複雑な家庭環境の友人に囲まれながら、平穏な日々が壊れないよう、どんなに息苦しくても見て見ぬ振りをしていた。

審査員コメント

  • 巧みな画力やアニメート、練られたストーリーとキャラクター、丁寧な演出によって制作された、プロレベルの短編アニメーション。かわいらしいビジュアルのこの作品の中で語られているのは作者の幼少時代のトラウマの経験であり、作品として描かずにはいられなかったという強い意志を感じました。作品の最後は”気づき”までで終わっており、根本的な問題は未解決のままなのが引っ掛かっています。ぜひ続編『わたしのトーチカ2』を10年後に作られるのを見てみたいです。

    村上 寛光 アニメーションディレクター/プロデューサー/株式会社フリッカ代表
  • 「わたしのトーチカ」というタイトルが明らかにするように、内と外、その中間領域である公共圏も含めた異なる空間のあいだの移動を、静かな展開の連続として描いている。その一方で、そこに当事者にとっては越えられない(越えることは死を意味する)壁があることを示唆する、ヒリヒリするような痛みを伴う作品。子供なのか大人なのか、女性なのか男性なのかわからないキャラクターたちの丁寧な造形も、何者にもなりたくないという彼らの隠れた欲望を見事に可視化している。トーチカが壊れ、明るい空間がひらけるラストは、自伝的作品から次に向かう、作家の未来をも期待させる。

    藪前 知子 東京都現代美術館学芸員