still human

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パフォーマンス|2021

花形 槙

多摩美術大学大学院

初めて”それ”をした時のことを、ありありと覚えている。 - 私は、足先にカメラを装着し、その映像をヘッドマウントディスプレイを通してリアルタイムに見ている。つまり、私の目は足先に移される。このことは、私の身体全体を変性させる。「前」は足先の方向へと変わり、それによって肉体の意味が変化していく。私はまるで生まれたばかりの生物のように、新しい身体の使い方を試行錯誤する。とにかく前進したい、目の前のものをよく見たいという衝動で思考が満たされ、言語的思考は失われていく。見慣れたはずの世界が、まるで初めて見たかのように新鮮に映る。触覚が私を世界に位置付けてくれることが嬉しい。確かに今、私は何か違うものになり変わりつつあるという感覚を味わっている…。 - 本作では、この社会で「理性」と呼ばれる狂気を反転するようにして、身体を反転し、「人間」を形づくるあらゆる身体的規範を解体する。そして、生まれ変わるようにして、全く新しい身体性を獲得していく闘争/逃走に身を置くことで、全てが意味付けられたこの「人間」なる肉体から、逃走することを試みる。

審査員コメント

  • 五体満足とよばれるような支配的な身体スキームを解体し、足が頭であり頭が手であるような身体を獲得しようとする本作品は、規範化された身体技法を相対化し、別の身振りを獲得するための規律=訓練であるといえるだろう。本作品のプラクティスは、単に別な身体技法の獲得だけでなく、標準的な身体を前提とするあらゆる道具、都市インフラ、社会制度をも書き換える可能性に満ちている。

    永田 康祐 アーティスト