Graftin’ Craftin’

ファブリケーション|2020

千葉 一磨 橋田 朋子

早稲田大学大学院

ART DIVISION SILVER

製造業において持続可能性が重視され、自然物を素材として衣料などの人工物を生産する事例が増えつつある。しかし、素材のみならず製造工程とアウトプットも自然物で構成できないだろうかと考えた。そこで、複数の植物体を1つに繋ぐ品種改良法の「接ぎ木」と針金で植物を特定の方向へ生長させるよう制御する「針金かけ」に着目した。Graftin’ Craftin’は、これらの園芸手法をそれぞれ接合・成型技術として利用し、植物の形状を制御することで、木を育てながらからくりを一体成型する新たなファブリケーション技術を提案する試みである。今回、機構学において最も汎用性のあるリンク機構1つで成り立ち、電力を使わずとも重力のみで斜面を降る受動歩行機を制作した。その結果、重心移動には課題が残るものの15度の傾斜を持つ緩斜面を50cm進むことができた。これまで3Dプリンタ含めデジタルファブリケーションがものづくりの個人化を促進させていることから、将来的に植物でできた機械要素やからくりなどを個人が生成・収穫できるような未来がくるのではないかと考えている。

審査員コメント

  • 接ぎ木による接合と、針金による整形という古くからある造園(=ファブリケーション)技術によって機械をつくる試み。デジタルメディアを使わないアナログファブリケーションで、昨今のテクノロジーを用いた先端表現に対する逆張り的アプローチだが、加速する資本のサイクルによる環境破壊がより一層、深刻な問題になっている現在だからこそ、注目すべき作品であり、今後ますます発展する可能性があるアプローチとして期待し、評価したい。

    やんツー 美術家
  • 植物を接木してロボットを作ってしまうという、一見突拍子も無いような作品だが、その背景には、特別な資本を必要とせず、誰もがDIY的に手に入れることができる技術の探求という、現在の社会や産業の背景にある、高度資本主義や合理主義、効率主義といった大きな方向に対する鋭い批評精神が垣間見える。一方で、ここで用いられている特異なファブリケーション技術は、伝統的な技術に対するデジタル世代からの再解釈ともいえ、今後テクノロジーが向かう方向について、実装可能性も含めて大きな示唆を与えてくれる。今後の活躍に大いに期待したい。

    藪前 知子 東京都現代美術館学芸員