螢火の身ごもり

アニメーション|2020

川上 喜朗

東京藝術大学大学院

ART DIVISION SILVER

「少年の妊娠」という一見ありえない題材を扱うことで、思春期の苛立ち、葛藤や焦りを表現することを一番に目指した。自分の無垢な意に反して身体が変化していく違和感、他者と馴染めないことへの焦燥、そしてその克服を、妊娠そして出産の過程を描きながら表現していくことを試みた。

審査員コメント

  • イラスト調の少年少女をモチーフに作品制作を続けている作者。この作品では、少年が思春期に心と体の成長や他者との関係について悩んで葛藤する様子を、少年が妊娠するという暗喩を用いて繊細に描き出している。作品の中で少年の両親やクラスメイトが具体的に描かれず、現れるのは黒い手だけであるのは、少年の内面の世界を描くために敢えて抽象的に表現しているのであろう。朝には消えてしまう夏の蛍の揺らめく光のような、儚さが感じられた。

    村上 寛光 アニメーションディレクター/プロデューサー/株式会社フリッカ代表
  • 思春期特有の他者との違和感や距離、精通後の不可逆と幼児性、そして妊娠。色鮮やかなキャラクターと息づかい、ジメッとしたライティングやエフェクトは隔離された世界の出来事のようで入り込み辛く、見るもののマイノリティへの視点を浮き彫りにしている。私たちが「起きるはずがない」と感じていることは近い将来日常になり得る可能性がある。多様な社会と生き方を選択できる中で、性別を超え自己の個性と向き合って受け入れる可能性をセンシティブに表現している作品。

    若見 ありさ アニメーション作家/東京造形大学デザイン学科アニメーション専攻 特任教授