Statue of Peace(邦題 : 平和の少女像)

体験型インスタレーション|2020

伊嶋 響

ベルリン芸術大学大学院

キム・ソギョンとキム・ウンソンによる彫刻作品「平和の少女像」をオマージュし、2019年のあいちトリエンナーレ内の企画展「表現の不自由展・その後」の閉鎖による表現規制と慰安婦問題をテーマとした体験型インスタレーション。第二次世界大戦時に日本軍により性的労働を強いられた女性達は今日、その存在を否定され、まるで存在しなかったかのように歴史から忘れさせられようとしている。「平和の少女像」と同じ寸法で作られた二脚の木製の椅子には少女像の姿はなく、少女の影だけが椅子の後方へと延びる。少女が座っていたはずの椅子の座面は人の体温を思わせるように暖かく、椅子に座る鑑賞者に“誰か”がそこに居た事を想起させる。 タイトル内の“平和”にかかる打ち消し線は、平和の象徴である像への拒絶、否定を表している。作品内の【影】と【座面の体温】は、【「平和の少女像」の不在】と【忘れられゆく女性達の不在】の2つの不在を示す。 たとえ像が検閲されようと、私たちはその像の影を見る。たとえ歴史から忘れさせられようとも、彼女たちの存在が消えることはない。

審査員コメント

  • 強い政治的記号性を帯びた彫刻である「平和の少女像」は、もちろん生身の人間がそこにいるわけではなく、あくまで彫刻作品であり、実在した固有の人物がモデルになっているわけでもない。この作品では不在になった意味性の強い主体の代わりに、座面に与えられた温もりによって、実物の彫刻作品を超える生々しい人物の存在を、豊かにイメージさせられるのではないかと想像する。歴史修正主義者たちは果たしてこの作品を体験した時、何を感じるのだろうか。

    やんツー 美術家