BEAT/BIT

サウンドアート|2020

宮下 恵太

首都大学東京大学院

本作品は音を信号として用いたデジタル通信端末装置および一連のシステムによって構成されたサウンドインスタレーションである。同時に、コンピュータと人間の間で情報を媒介するインタフェースでもある。本来人間には知覚することのできない電気信号-bitを、打音という身体的な信号-beatに置き換え知覚化することで、我々はより直接的にデジタル情報への干渉を行うことができる。情報を伝送するための信号には電気的に発生させた音ではなく、物体を叩く音を用いている。これはコンピュータだけでなく人間にも同じ信号を発生させることができるということを意味する。人間とコンピュータが同じ空間を共有し音を発生させることでコンピュータの通信が人間にとってのノイズにもなり、人間の行為はコンピュータにとってのノイズとなる。技術を覆い隠しブラックボックス化させる人間中心的な「直感的で、わかりやすい」インタフェースではなく、コンピュータの仕組みを中心に据えたインタフェースを実装することで、人間とコンピュータの新たな関係性を示唆するものである。

審査員コメント

  • 不可視なもののビジュアライズ自体は様々な作家が取り組んでいるが、変換をするにあたっての構造の整理や洞察の精度が高く、デジタルな信号が非常にアナログな音として出力されているのも面白い。特に人間中心主義的なインターフェースに疑問を提示し「人間側が逆に機械の言語を習得する」作品後半のアプローチが、今後の新たな社会のあり方を示唆している点に強く惹かれ、可能性を感じた。
    いたずらに派手な表現に走らない骨太で強い作品。要素を削ぎ落としているからこそ、普遍的で文化を問わず面白がられそうだと感じた。

    市原 えつこ メディアアーティスト/妄想インベンター