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インスタレーション|2019

日比野 光紘

情報科学芸術大学院大学

情報技術の発展と並行して、プログラミングの手法も変化を続けている。コンピュータの高性能化やシステムの大規模化に伴い、今日のプログラマには高速な処理を行えるのみでなく人間にとっても可読性の高いソースコードを書くことが求められる。そして記述に用いられる数多くのプログラミング言語は設計思想により多彩な表現力を備えている。 私にとってプログラミングはコンピュータを制御する手段であると同時に自身の思考を表現する方法でもある。そして普段から慣れ親しんだプログラミング言語はその思考の細部を形作る道具の一つであると考えている。 ソースコードの機能ごとの単位であるモジュールに分割されたそれぞれのディスプレイには、私の体験した出来事やその時になぜそう考えたのかがJavaScriptの文法で記述されていく。日本語の識別子のみでなく予約語やアルゴリズムも含めて私自身のパーソナルな思考を表現することで、プログラミングという行為の新たな捉え方を示す。

審査員コメント

  • 人間の曖昧な思考を記号によって齟齬なく記述しようという試みは、古くはライプニッツの普遍記号学で試みられていることで、現在のあらゆるプログラミング言語(コンピューター)の礎を築いてる。加えて(それ故にか)、人間の思考や自然言語をプログラミング的な形式言語で表現しようとする発想は、プログラマなら誰でも一度は思いつきそうな凡庸なアイデアなので、更に深く踏み込み、独自のパースペクティブを与え、アプローチする必要があったように思う。また、Javascriptを選ぶのであれば、その言語でないと表現できないような内容であるのかどうか、そしてこの形態がインスタレーションとして最適な見せ方だったのか、コンセプトを具現化するために、吟味すべき点がいくつかあるように思う。本作の今後の展開に期待したい。

    やんツー 美術家