Stone hits in the display

Stone hits in the display

映像インスタレーション|2019

臼井 達也

多摩美術大学

かつてフォンタナなどによって絵画におけるキャンバスの存在が考察されたが、現在の液晶ディスプレイにおいても通づるものがあると感じる。 鑑賞者が液晶ディスプレイで映像を見るときに見えるのは 無論そこに映し出されている映像であり、その際液晶ディスプレイにおける画面の存在は絵画におけるキャンバスと同じように、鑑賞者にとっては存在しないものとして扱われる。本作では映像に映るモデルが私たちの側に向けて石を投げ続ける。 石は液晶ディスプレイの内側にぶつかり白い傷がつく。 映像が進むにつれて画面にたくさんの石が投げられ、傷が増えていくことにより鑑賞者にとって存在しないものとして扱われていた一枚の画面の存在が徐々に見えてくる。画面についていく傷、石の打撃音、傷のついた透明板を使うことによりディスプレイの内側と外側を隔てる画面の存在を考察させる。

審査員コメント

  • この作品で重要だったのは、ルーチョ・フォンタナの切り裂いたキャンバス作品への言及であり、現代的な美術作品において代表的な支持体である「ディスプレイ」に置き換えて、同様の問題に言及している点である。切り裂くことで、それまで視覚的イリュージョンが繰り広げられていた界面がただの布であることを暴いたように、本作では投石によってそのイリュージョンが起こる境界に存在する、透明な板へ注意を向けることを鑑賞者に強いる。それだけでしかない、ワン・イシューで一点突破のシンプルな作品であるが、そのメッセージは強く、2019年現在、特に本コンテストのアート部門において評価すべき作品だと感じた。ただ、フォンタナが「芸術に新しい次元を生みだし、宇宙に結びつくことを願う」と言い放ったように、もう一歩踏み込んで、本作においてもそのような飛躍した、壮大なスローガンを打ち出してほしかった。

    やんツー 美術家