Sequences/Consequences

映像|2019

中路 景暁

情報科学芸術大学院大学

ART DIVISION BRONZE

ベルトコンベアーを用いて行われる50のシーケンスを連ねた映像作品。 ベルトコンベアー上で労働的に見えながら、生産性の無い作業が行われる。 今日、工場のラインの様子や装置との労働場面がスマートフォン等で撮影、YouTubeなどのソーシャルメディア上にアップロードされ多くの再生回数を記録している。 切り取られた動画からは細かい背景までわからないことも多い。しかしそれらの動画の鑑賞者はそこに生まれている物や装置の動き、作業する人の動きに見入る。そこには機能美にも似た装置が持つ人々を魅了する性質や、単純な作業ながらも現代のテクノロジーであっても容易に機械化できないために発生する人の作業の中に身体性の高度さが表れている。 本作品はそのような映像からヒントを得て、産業装置を代表するベルトコンベアーから生産性を剥ぎ取り鑑賞の対象として扱ったときに生まれる表現を探求したものである。

審査員コメント

  • ソーシャルメディアにアップされている工場のライン動画に潜んでいる生理的な心地よさをリサーチにより抽出し、自作のベルトコンベアーを用いて作者自身の身体との関係性を際立たせながら、50のシーケンスで成り立つ映像に再構成した作品。合理性の象徴である工場の製造プロセスから生産性を剥ぎ取ったあとに残る何らかの魅力、そして容易に機械化・オートメーション化できない人間の身体性の対比が探求されている。制作動機、コンセプト、最終アウトプット、全てがパズルのように理路整然と通貫しており、齟齬がない点にまず好感を持った。
    同時に評価しているのが作家の執念。明和電機などの作家もそうだが、作者のそれまでの人生や生い立ちを背骨にした表現は強い。作者がもともと工学を学びメカニカルエンジニアとして勤務経験のあることを後から知ったが、その中で長期的に獲得していった独特の身体感覚や引き出しがあるからこそ、無意味な動作にも関わらず謎の説得力がある50ものシーケンスを生成できたのだと納得した。作品には良い意味でのプレーンさ・分野の不定形さがあり、メディアアート、デザイン、商業など、幅広い分野から受け入れられそうな可能性も感じる。ホワイトキューブにプロジェクション大写しでずっと観ていたいし、テレビで瞬間的に放映してもウケそうだし、企業商品とのタイアップもできそうだし、「演劇」としても成り立ちそう。色々なシーンに奇襲をかけたいと妄想の膨らむ作品。

    市原 えつこ メディアアーティスト/妄想インベンター