(UN)CONSCIOUS

(UN)CONSCIOUS

インスタレーション|2019

柴田 将希

多摩美術大学

本作品は筋電センサーとEMSパッチを合わせた自作デバイスと、それを装着して行ったドローイング、その様子を記録した映像で構成されている。 身体動作の随意性を排除したyang02のドローイングマシンや、SFで描かれる他者による身体のハッキングを踏まえ、不随意に身体が動かされた時にどのような動きが生まれるのか。その実践を、デバイスを装着してドリッピングや円相、書き慣れた名前を描く事で試行してきた。そして本作品ではフリーハンドで随意的に描いた物と、デバイスを装着する事で腕に強制的な動作を強いて描かれた物を、レイヤーに分けて空間上に提示する事でその差異を可視化している。また、「CONSCIOUS」と「UNCONSCIOUS」という対の単語を描く事でもその意味を強めている。本作は我々の動作の中にある随意と不随意の差異の可視化する事で、自らの身体を捉え直す事を目指したドローイングとその記録映像である。

審査員コメント

  • 自らの身体をハックし、手を動かそうとする意識と制御のあいだのジレンマをユーモラスに表現するパフォーマンス作品。作者が体当たりする状況は、痛がる様子が笑いに変わる演劇性を生み出し、「ついつい見てしまう」ユニークさがある。身体拡張系技術の発展とともに、こうした身体ハック系の表現はより豊かになっていくだろう。一方で、そのジレンマを表現する手段が文字を書く行為だけで良かったのか、それを「(無)意識」と呼ぶのは大袈裟すぎるのではないかという疑問も残る。昨今、人間に自由意志はないといわれるが、脳科学や身体へのリサーチがさらに加味されると良いと思う。

    塚田 有那 編集者/キュレーター