Translucent Objects

映像|2019

平瀬 ミキ

情報科学芸術大学院大学

ART DIVISION GOLD

作者Webサイト http://mikihirase.x0.com/

本作品はメディアを通してモノを見ることを再考させるための、映像表現を用いたメディア空間における彫刻作品である。1つの出来事を、表と裏の2つの方向から同時撮影した映像を合成する手法によって、実際の撮影空間には無い物体を作り出し、現在の人間の身体構造では同時に捉えることができない表裏を見る光景を表現した。今日のメディア環境において、1つのモノやコトを多様にとらえる視覚の拡張は進展しており、その一方で正確な位置関係や、本来の質感はとらえきれなくなっている。本来のものとは異なる情報媒体を通してものごとを知ることが日常となり、膨大な情報が氾濫する一方で、そのものの真偽がわからない中で、それがどうあるかに考えを至らせること、また、自身の目でみるものを選び取ることを本作品は要請する。シンプルな手法がつくりだす複雑な経験によって、知覚と情報のバランス、メディアを通して対象をとらえることの意味を問いかける。

審査員コメント

  • 他者の視点を自分のものとして経験することはアートの根源的なテーマですが、これを自分の視点と相対化させながら動きの中で連続して見せる構成に新鮮な驚きを感じました。彫刻という複数の視点の統合として経験されるメディアについて、また人間の認知の構造についての言及でもあり、多層的な読込を可能にします。さらには、作品世界を離れて、ジェンダーや人種、世界情勢など広く社会的な事象へと代入可能な幅も持っており、個と複数性についての問題提起的な作品としても高く評価したいと思います。

    藪前 知子 東京都現代美術館学芸員
  • カラフルな積木をテーブルの上に並べていく。積木の手前と奥に置かれた二つのカメラで撮影された映像を透明度50%で重ねることで、一つの映像を作り出す。二つの映像の積木が重なりあった部分は不透明になり、重なっていない部分はアクリル素材のように奥が透けて見える。

    映像作品を見ているというよりは、カメラとモニタを介さないと描けず、鑑賞も出来ない、新しい形の絵画、あるいは彫刻作品(と、そのメイキング)を見ているようでした。とてもシンプルな仕掛けですが、想像以上に複雑な形や色が現れ、見ていて自分もやってみたくなりました。

    ゲームやインタラクティブの作品で「やってみたい」と思う応募作品は珍しくありませんが、この作品のように「この装置を使って自分も創作してみたい」と思えるものは今まであまりなかったので、とても刺激的でした。

    大山 慶 プロデューサー/株式会社カーフ代表取締役