越してきたばかりの新しい家族は今日も、今晩の夕飯の話をしながら買い物カゴを手に取る

インスタレーション|2019

平山 夏帆

多摩美術大学 大学院

緑が根こそぎ剥ぎ取られハゲ山と化した風景。それは人々の住処となる新しい街をつくる為の一つの工程にすぎないが、あまりに痛々しい。これはそんな宅地開発事業「南山東部土地区画整理事業」を発端とした作品だ。本事業は作者が育ち現在も暮らす東京都稲城市で今も行われており、開発にあたっては長きにわたり、開発反対派の住民と推進派の市の間で大きな対立が起こっていた。反対運動は市内外へと大きく広がり、マスコミや著名人らも取り上げるほどであったが、虚しくも里山は切り開かれた。私はそんな経緯をもつ開発現場へ足を運び、工事現場内の土を採取した。本作はその土を使い”山を作り山をこわす”を延々と繰り返す装置と、土採取の様子を記録した映像、本開発現場の航空写真と設計図で構成される。装置は、風景の喪失と焼きましを繰り返す人々の消費行為が、自然を相手取った大規模なナンセンスマシーンのようだという作者なりの皮肉の具現化である。

審査員コメント

  • 少子高齢化が顕在化し、高度経済成長期から無数に建設されてきた集合住宅が「巨大な老人ホーム」と囁かれる現状があるにも関わらず、未だに繰り返される宅地開発。正に本作で繰り広げられてる光景である、決められたプロセスを実行するだけの機械のように、「利権」というアルゴリズムによって、それは今正に繰り返されている。そのメタファーとしてまず本作は機能するが、特に作者は、モチーフとして扱っている稲毛市の該当地区が、自分の生まれ育った場所であるということで心を痛めているのだろう。しかし、昨今のソーシャリーエンゲージドアートのような、勇み足で社会へ介入いくような姿勢はなく、わかりやすく悲観も肯定もせず、本当に細やかに、ほんの少しの皮肉とユーモアで結晶化しているように見える。淡々と作者のため息が聞こえてきそうな独特な佇まいに惹きつけられた。

    やんツー 美術家