鬼とやなり

アニメーション|2019

副島 しのぶ

東京藝術大学

ART DIVISION GOLD

作者Webサイト https://www.shinobusoejima.com

昔から、この国ではどこの家にも妖怪家鳴りが住んでいた。しかし、徐々に衰退していく木材建築の家々には、もはや耳の遠い老人たちしか住んでおらず、家鳴りの声も聞こえない。家鳴りは時々、それを寂しく思う。本作の主人公は、日本の民間伝承に登場する「鳴家(やなり)」と呼ばれる数寸程度の妖怪で、昔から時々家の中で何やら不可思議な軋みなどの音が聞こえるのは、住民を驚かせようとする彼らの仕業であると信じられてきた。日本では、「家鳴り」しかり、古くから自分たちの住む家には見えない影の部分があることを信じて恐れ、それらを「鬼」と呼び、日常から遠いものとした。今では、この文化は廃れつつあり、かつて「鬼」を感じていた住民たちは年老い、明るい現代社会の影として、鬼の側に立場が逆転して生きているかのようだ。本作は、現代の社会から取り残されていく老人と民間伝承の生き物の姿を描いた映像作品である。

審査員コメント

  • 自然光を活かした撮影、すごく雰囲気が出ていて上手く撮れてます。
    コマ撮り素材を自然光(っぽく?)仕上げるのは、相当ストイックな作業だったことでしょう。
    人形造形も「祖母の家にあるモノ」で作られたかのような、ちゃんとした“意味のある”アートワーク設定で好きです。
    間の取り方の編集も良いですね。
    過去作も拝見しましたが、今作で良い意味で「毒気」や「敵意(?)」みたいなモノが減少して、達者になっている思います。
    (※それでも、滲み出るエッセンスとして十分効いてますよ!)

    今後のさらなるご活躍、期待しております!。

    真壁 成尚 ディレクター/WOW株式会社
  • アニメーションと映像が持つ本質をしっかり把握した作品だ。実写ではなく作り込まれたアニメーションで、主観として伝えられる視線と、状況や世界観を伝える客観的視線。映像が物語として構成される時、時間軸の中でのこの視線の差異とタイミングがとても重要になる。作者が専門家としてアニメーションを学び、発見した技法を結集している。

    丁寧に調べられ考えられたシナリオ、真実感を増す光の変化、音の効果。的確なコマドリによる動きとカメラワーク、物語の展開。全てが作者の思いが計画通りに描かれた重厚な作品だ。作者の映像センスが光っている。

    陣内 利博 武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科 教授
  • ただただ美しかったり、心地よかったり、とにかく完成度が高いという赴きの作品ほど、そのスペクタクルによって本質が見えづらくなりがちなので身構えて見てしまうのだが、そんな私個人の鑑賞バイアスを物ともせず、圧倒的に美しく クオリティの高い作品で評価せざるを得なかった。しかし上記のような感性や知覚に喜びを与えるだけではなはい。「家鳴」という民間伝承が正に語り継がれてきたであろう、築80年になる作者の祖母宅で作品を撮影した意義は非常に大きく、実際の家屋や調度品は、鬼のスケール感を正確に伝えフィクションの世界にリアリティを与える。映り込む祖母の姿と消えつつある民間伝承の関係は、高齢化という現代の日本の社会問題も呼び込み、コンセプト面における巧さにおいても秀逸で、スキのない作品だ。

    やんツー 美術家