MOWB

インスタレーション|2019

ゆはらかずき

東京藝術大学

ART DIVISION PLATINUM

「MOWB」は、デジタルドローイングによるVRアニメーション作品である。鑑賞者はヘッドマウントディスプレイを通してアニメーションを体験することができる。VRの閉鎖的な空間を母親の胎内として描き、胎内回帰的な物語を紡ぎだした。 一本のへその緒でつながれた親子は、命のやり取りをしながら、母は吸収され、娘は母の命を引き継いで成長していく。すべてを引き継ぎ、母と一体になった娘は、母になろうと決意をするのだった。

審査員コメント

  • 360°のアニメーションという新奇な表現手法自体にシンプルな驚きがあり、それだけでもとても興味深かったが、そもそも作品の世界観自体がすばらしく魅惑的であった。統一感のある独特なヴィジュアルスタイルが確立されており、非常に完成度が高い。別次元に存在するような、幻惑的な世界に引き込まれた。サウンドデザインのクオリティも素晴らしく、この作品の深遠な雰囲気を作り出すことに成功している。表現手法、世界観とテーマ、制作技術の全てが相互に高いレベルで組み合わさったとても興味深い作品だと感じた。

    大塚 康弘 ディレクター/株式会社デジタル・フロンティア
  • 手描きアニメーションをVR空間の中で展開するーー膨大な手間と時間をかけつつ過渡期の技術で実験を行うという、まさに学生時代にしかなし得ないようなことを突き詰めた作品。胎内を思わせる空間を舞台に母娘の一体関係と分離をVRで描くという内容と形式の一致、必然性も高い評価のポイントとなりました。その没入感が、形式によってだけではなく、すべての人の記憶に訴えかけるような内容も合わせて多層的に生み出されているところが素晴らしいです。今後、展示形式としてこれを手がける人が増えてくる分野だとは思いますが、既存のジャンルの空間に吸収されるのか、そうではない自律性を獲得していくのか、後者の可能性も十分ありますし、その中心で頑張っていただきたいです。

    藪前 知子 東京都現代美術館学芸員
  • ここ数年のVRブームにより数多のVR作品が誕生したが、「パノラマアニメーション」という表現の新地平を学生が生み出した衝撃作。Unityなどのゲームエンジンを使用せず、作者により膨大な手数で描き込まれた、360度手描きアニメーションの体験は圧巻。仮想空間との繋ぎ目となるケーブルを「へその緒」に、閉鎖的なVR空間を「胎内」のアナロジーに落とし込み、 手法の発明だけではなく、VRというメディアの本質的な特性が物語にも反映されている。何らかの技術がブームになると、その表現のプラットフォームの制約に絡め取られて表現が似たりよったりになることが多いが、新しい技術の特性を素早く理解したうえで、同時にツールに「使われず」に逆に自在に使いこなし、高いレベルで表現に昇華させる才覚に舌を巻く。
    圧倒的賞キラー作品となった本作、これからも破竹の勢いになることが予想。評価員としては評価しますが、作家としては嫉妬せざるを得ないですね、これは……。

    市原 えつこ メディアアーティスト/妄想インベンター