Hack In

ウェブ|2018

石原 航

慶應義塾大学

作品Webサイトhttps://hack-in.wiki/

作者Webサイト http://kooh.me/

インターネットは分散のメディアと言われ、国や企業のもつ権限や能力を分散し、個人をエンパワーメントしてきた。しかしインターネットが真に分散のメディアであるのなら、その個人ですらも分散させてしまうのではないかという仮説をHack Inというデジタルコミュニティでシミュレーションしている。 Hack Inでは他人のアカウントにログインし、他人のふりをして投稿することができる。自分を編集し演出するという個人の権限を分散している。そしてこれらの投稿にはLikeの代わりにAlikeというボタンがついている。フォロワーはその投稿が本人らしいかどうかを評価できる。これによりハックされた人は自分らしさとは何かを見つめざるをえなくなる。(自分の投稿よりも他人にハックされた投稿の方がAlikeを獲得してしまうこともある。) こうして自分を分散しておけば個人という単位で自分が死んだとしても、分散によって生まれた分人は生き続けることができる。死後も誰かが自分を更新し続けてくれる。そう考えることができれば自己保存の欲求により生じる死の恐怖はやわらぎ、もう少し安らかに個人としての死を迎え入れることができるかもしれな

審査員コメント

  • GDPR (EU一般データ保護規則) によりヨーロッパでは今まで以上に、ネット上での「個人情報」の取り扱いが重要視されている。また、CC などのオープンなライセンスでも「BY」つまり、個人のクレジットを表示する権利が前提となっている。

    一方で、鈴木健氏の「なめらかな社会とその敵」などで提案される、「分人」という考え方とその可能性は非常に魅力的だ。この作品は分人として体験するソーシャルメディアだ。このサービスが活発になったときに、どういったやりとりが起こるのかは興味深い。

    以前、秋田内陸のスーパー銭湯にいったとき、地元のおばあさんたち 8 人ほどが休憩室の畳にくっついて寝そべって、夢うつつな状態で世間話とも独り言ともいえない、境界線のない会話が繰り広げていた。主語がなにでだれの話をしているのかがわからないぼんやりとした状況に、私は衝撃を受けたが本人たちはとても心地の良さそうであった。

    萩原 俊矢 ウェブ・デザイナー