卒制彼氏三部作(恋のABC編、マンネリ編、わたしは彼を素材以上に男として愛せていたのか編)

アニメーションインスタレーション|2018

岡田 詩歌

東京藝術大学

ART DIVISION GOLD

今まで私は、主に子供の頃に抱いていた性的なものへの「興味」や「嫌悪感」と、現在の自分の性知識との差異について、制作してきた。しかし、実のところ私には彼氏がいたことがなかったため、想像に基づいた制作しか行えていなかった…。そこで想像から現実へと発展させた作品を制作するべく、私は制作のために初めて彼氏作りをはじめ、数ヶ月後に見事初彼氏ゲットに至った。私はそこから交際中のやり取りで心が 動いたことや、好感度などを彼氏の観察日記としてつけはじめた。そんな中、突然別れが訪れた。しかし私はおよそ3日ほどで立ち直り、それほどのショックを受けていない自分にショックを受けた。私は、結局彼を素材以上に1人の男性として愛せていなかったのだろうか? 今作品は、内容だけでなくアニメーションやBGMの曲調からも心情や作品の変化を感じさせるためにも、様々な表現方法に取り組んでいる。そして、ほとんどの人間が 経験する / したであろう「恋愛」をテーマに、1 つの恋の始まりから終わりまでを描いたアニメーションドキュメンタリーの三部作だ。

審査員コメント

  • 本作は”自分”を用いた実験的な作品ともいうべきだろうか。自身の体験に基づくアニメーションや漫画等の作品はめずらしくないが、本作は”作品”とするために意図して”経験”を設定しようと試みる。「作品」とはなんだろう、「経験」とはなんだろう、と考えさせられる。作品のコンセプトにおいて、「個」に比重を置く作家もいれば、「社会」に置く作家など様々だろう。一方、本作は両極端の領域を行き来をしているようで、その大きな揺さぶりが絶えず注意を引く。アニメーションや音楽など全て個人による制作スタイルに加え、シーンに合わせた多様な描写スタイル等からも作者のマルチな才能がうかがえる。

    藤木 淳 アーティスト・表現研究
  • 卒業制作のために彼氏を作り、その彼氏との変遷を作品にしている。一見、作品のために特別な人間関係を作ろうという、荒っぽいアプローチだが、関係の変化を日々使ったお金のデータで見せたり、自分自身のキャラクターにその時々の出来事について鼎談させるなど、体験の分析が細やかで説得力があった。作者が持つ客観的な視点と、表現の工夫があることによって、見る人を置いてきぼりにしない作品として上手くまとまっていたと思う。

    久納 鏡子 アーティスト