Archi-Tekton

映像|2018

浜田卓之

情報科学芸術大学院大学

ART DIVISION GOLD

本作品はストリートスケートボーディングをモチーフとして建築の概念の再考を目指したインスタレーション型の映像作品である。作品制作において、アンリ・ルフェーヴル 『空間の生産』 イアン・ボーデン 『スケートボーディング・空間・都市』 ティム・インゴルド 『ラインズ -線の文化史-』を参照することで、建築の概念について再考し、ストリートスケートボーディングを本作品における建築の概念として提示する。そこではスケーターは建築家であり、動き続けるスケーターの軌跡は新たな動線(line)を描き出すと仮説を立てたうえで、アマチュアスケーターである作者自身のリサーチ(街でのスケートボーディングの実践)をもとにに、壁によって区切られた空間内に再構成した。約1500個のLEDによる動きと8つのスピーカーにおける立体音響の動きを同期させることでスケーターの像を表現し、想定できない動線からみる空間生成を体感することができる空間を創り出した。本作品において、空間を捉える手段の一つである「建築」について再考するとともに、根源的な人と空間の関係性について鑑賞者に示唆することを目指す。

審査員コメント

  • スケーティングボードの動きと音を別空間へマッピングすることによる立体サウンド・ビジュアライゼーション。本作における光と音による“幽霊”は、他の作家による過去の同様な表現以上に空間的な拡がりが感じられる。そのことに加え、フィニッシュ時の軌跡の拡散から、単純な物理情報のマッピングではなく、また演出とも異なる、作者が内在的に持った眼には見えない「情報」の空間への定着として、本作から4番目の次元が感じられた。

    藤木 淳 評価員
  • スケートボーダーは都市構造体のハッカーであり、路面に自由に動線を引くライナーであり、空間を把握する3Dセンサーかもしれない。
    スケートボーダーは一瞬にして軌道上の建築物や構造体、構成される形状を正確に把握してベストな動線を描く。
    このインスタレーション作品では、観客はウィールが路面を転がる振動音やトリックを決めた時の歓声を聴き、ボーダーの身体移動と同期したLEDの点滅移動を知覚することで、作者が精緻に収録再現した「室内空間」、「屋外空間」、「都市空間」の空間形状をスケートボーダーの生きた身体を通し、生々しい運動イメージとして空間を認識する。

    この作品で思い出したのは映像人類学者の港千尋氏の以下のような文章である「フランスの人類学者マルク・オジェはコミュニケーションと交通、消費の空間において、大規模化と高速化が進み、都市への集中かが起こり人口は移動する。アイデンティティを構築することも、関係を結ぶことも、歴史を定義できない空間を非ー場所と呼んだ。
    ヨーロッパの大都市の郊外の駐車場や高速道路の駅周辺に描かれるグラフィティは非ー場所に場所性を与えるサインなのだろう。」(「風景論」要約)。
    スケートボーダーが都市空間にベストな動線を瞬時に生成させ疾走することも、関係性を持てない空間に場所性を与える行為なのかもしれない。
    その場所性を与える身体行為によって生まれる空間が作者の制作意図である「空間としてのArchitectureの生成」なのだろう。

    寺井 弘典 審査員