隣の席の少年

映像インスタレーション|2016

木村 優作 菅原 達郎

東京藝術大学

審査員コメント

  • 理論家、レフ・マノヴィッチの制作した《ソフト・シネマ》(2002ー2004年)は、GUI、テレビジョン、監視カメラなどの多様なソースをリアルタイムで配列し、多様なスクリーンレイアウトで視覚化する、編集ソフトウェアが内在している、データベース型作品として歴史に残っている。だが、十数年が経ったいまはもちろん、当時も言葉の説明なしに映像だけでマノヴィッチの作品の価値を伝えることは極めて難しいことである。この作品に描かれている子供たちのミニテストは些細な出来事だが、背後にある「プログラム」に対する考え方にはマノヴィッチの問題意識とも通じる部分がある。作者はいうーーー映像というメディアにおいて、「プログラム」する、つまり内容が分かってしまうということは、先を予想しながらその予想との差異を楽しむという映像の性質と逆行するものであり、どのように映像と「プログラム」を共存させるのかということは、大きな課題であった。そこで本作では、鑑賞者が思い至らないほど、無自覚に「プログラム」してしまう構造を作り出し、従来狙っていた、書いた通りに動く「プログラム」の従順さ、快感を鑑賞者に感じさせること、そして、鑑賞者によって映画がリアルタイムにプログラムされる、新しい映画体験を創出するということを成立させた。ーーー 実際、この作品は作者の意図通り実装されている。問題は、そこにもう一度「映像」のレイヤーが重ねられることによって、観客の追体験と作品理解が極めて難しいということである。だが、それは明らかにこの作品だけの課題ではない。

    馬 定延(マ・ジョンヨン) メディアアート研究・批評