丈の低い木の丈は低い

丈の低い木の丈は低い

インスタレーション|2016

小林 椋

多摩美術大学大学院

アート部門 GOLD

ART DIVISION GOLD

審査員コメント

  • 1つ1つが独立した佇まいを持ち、見る側と関係なく、少しユーモラスに淡々と動いたり音を発したりする姿は、未知の生態系を前にしたような印象を受ける。ある技術の今まで知られていなかった特性や使い方を見せる時に、進化の系統図になぞらえて語られることがある。この作品は、無機的なものの集まりと関係が、生き物の多様性まで感じさせるところに、作者の過去の作品と同様、完成度の高さを感じた。

    久納 鏡子 アーティスト
  • 1台のノイズ・ジェネレーターと8台のオシレーター、そしてそれらの音を出力するホーンスピーカーからなるインスタレーション。音楽史における音/音楽とテクノロジーの関わりと黎明期の電子音楽や自動演奏楽器をめぐる思考によって裏付けられている作品である。しかし個人的には、変化されていくサウンドスケープよりも、空間のなかに配置されている「もの」たちの存在感に驚いた。楽器というのは、音と形のあいだに論理的な整合性が取れているはずだが、これら手作りの「もの」はみたことのない個性で溢れている。中に入っている装置から発生される音を変化させるために「ツマミ」を動かすという目的に対して、これらの動きは無駄に優雅で、形と色は無駄に綺麗なのだ。これらの複製不可能な「もの」たちが表す知的なユーモアと固有の美意識は、万人のための音楽よりは一人称の美術だと思う。

    馬 定延(マ・ジョンヨン) メディアアート研究・批評