カーテン カーテン カーテン

カーテン カーテン カーテン

アニメーション|2015

大内 里絵子

北海道教育大学大学院

何もない日常の中に、隠された何かがあるのかもしれない。窓の奥、カーテンの向こう側。 自分の中にある、日常を過ごす中で感じる孤独と、何かに脅かされているような雰囲気を映像的に表現した。その感覚を、腕をつめでひっかく自分のクセと、カーテンを用いて例えた。静かな動きと激しい動きを用いることで、自分自身をコントロール出来るときと出来ないときの差や、感覚の変化と乖離、不安定な感触などを表した。本作では、ネガティブなものを映像化しようとはしているが、その感覚を否定したいわけではない。そのため、日々感じている否定的な感情もひっくるめて全てが自分だ、という解放感・容受を伴うラストにした。

審査員コメント

  • 「冷たさ」「解体」といった、温かい肉体を切り裂き無効化していくような感覚が前景化している。もはやこの世界では、生身の女性よりも、イメージ上の女性のほうが断然リアルで、アクチュアリティもあるとでもいうかのように。世界はいまや、こんなにもひんやりとしている。感情などどこかへと消え去ってしまい、すべてがフラットなものとなる。飛翔というありきたりな結末が、それが本来獲得すべきカタルシスを得ることに失敗している。でもおそらく、この失敗にこそこの作品の本質が詰まっている。感情はもはや形骸化している。それは単に、形式的なものとしかなりえない。そして、それに対して、私たちはどうしていいかわからない。

    土居 伸彰 アニメーション研究・評論
  • 去年の作品と同様、短いシーケンスのアニメーション群と、フィールドレコーディングした音源から構成されており、相変わらず全体が緊張感に包まれている。とくに投入されているアニメーションの幅も広がると同時に個々の精度も高くなっている印象を受け、そのせいか緊張感はもはや異常とも言えるほどソリッドな状態になっている。
    一方で前作にあった無時間的な感覚は後退し、なにか物語めいたもの、展開めいたものが新たに導入されている。風景から個人へのフォーカスの移行。そして、それがラストのカタルシスに繋がるわけだが、正直なところその物語が何を示唆しているのかは十全に理解することはできない。ただ、そうしたギリギリの緊張感と物語を両立したところがこの作品の達成であり、可能性である。短編のほかのバリエーションや、中編など今後の展開に期待したい。

    渡邉 朋也 作家
  • デジタルとアナログ、具体と抽象といった、相反する表現が複雑に入り混じった様子が、この作品性と非常にマッチしており、作者の中の複雑な心情風景を感じさせる。色彩設計やキャラクターデザインに関しても同様で、あえて意図的に愛らしさと狂気的な要素を共存させる事が逆にこの作品に奥行きと意図を強めている。

    谷口 充大 ディレクター/テトラ
  • 切り刻まれたり、かけたりしていて、覆い隠したくなる。でも見せたいし観てもらいたい。繰り替えされるアニメーションからは日常を。変化するコスチュームは揺れ動く気持ちを。青空の下、屋上で走って飛んで回転してジャンプ、陰鬱で内向的だけど前向きで開放的な表現がリアルでした。

    堀口 広太郎 プロデューサー/グラフィニカ