あそびば

あそびば

映像|2015

八重樫 明星

北海道芸術デザイン専門学校

コンセプトは「そうだ ゲームしよう」「ほんとうに したいことしよう」ゲームが好きな女の子、という少し変わった主人公のお話です。ゲームが好きというだけで偏見を持たれたり、ましてや女の子が、という難しい心情の表現をしたいと思いました。何か自分のしたい事に一歩踏み出せない人がこの作品を見て、好きなことを自信を持ってして欲しい、と言う作品です。主人公、そして出てくるもう一人のキャラクターは、私自身ととある友人がモチーフです。

審査員コメント

  • 僕はファミコン以降のゲームの進化とともに生まれ育ってきた世代の人間として、ゲームというものが人格形成や世界認識に大きな役割を果たすフィクションとして、自分のなかで機能してきたことは、身を持って分かっている。この作品はそのことを改めて思い出させてくれる。ゲームの形式、グラフィック、物語を通じて、世界を理解している側面もあるということだ。この作品で特筆すべきは、ゲーム内のキャラクターたちの造形である。キャラクターたちが、(恐怖の)感情のかたちをしているのだ。私たちはゲームのなかでこそ、死や強烈な恐怖・孤独を最も身近に体験するのだ。

    土居 伸彰 アニメーション研究・評論
  • アニメーションであるものの、ゲームを通じてある少女の成長の過程を追っていくという主題に関連して、プレイ動画のような側面を持っており、まずその特徴的な形式が目を引いた。とりわけ出色なのは、物語を進めていく中で登場するゲーム(風のアニメーション)で、ファミコンやスーファミ、プレステ(あるいはセガサターン)、Xbox(あるいはPCゲーム)など、実在のゲーム機特有のグラフィック質感がピタリと再現されている点である。思えば、ファミコンと同級生(1983年度生まれ)の自分などはゲーム機に搭載されたCPUの処理ビット数の進歩とともに成長してきたようなところがある。進級=ゲーム機のグラフィックが美しくなる、と言っても過言ではないくらい彼らの成長を意識してきたし、翻ってはゲーム機の進歩を通じて時の流れを感じてきた。この作品では、少女の成長とそれに伴う内面の変化が、実在するゲーム機の時代ごとの変遷と、それに伴うグラフィックの進化と結び付けられて展開していく。これにより、作中の時間の流れがよりリアルなものとして、見る人の人生経験と共鳴し、フィクションともドキュメンタリーともつかない独特な質感を獲得させるに至っている。

    渡邉 朋也 作家