CMYK+W

インスタレーション|2015

小沼 あみ

多摩美術大学

写真などを印刷する際に用いられるプリンタでは当然のように色は紙の上に混ざった状態でアウトプットされます。この作品はそれとは対照的に、その経過を可視化することはできないのかと考え、画面の中で糸をレイヤー状に重ねることで減法混色と同じような効果を生み出しました。それはデジタルとアナログの間で生まれた新しいメディアとなり、様々な視点からみることのできる作品となりました。それぞれの色の糸は一つの始点から始まり、始まりから終わりまで一本の糸となって時間の経過を強調しています。遠くから離れて見た時に視覚的な錯覚の体験によって作品が成り立ちます。無機質な素材から生まれる有機性をテーマとし、作品自体も2つ揃う事で意味を成す両親がモチーフとなっています。

審査員コメント

  • 印刷の色彩原理を糸で具現して描かれた平面的な立体作品。頭では理解できるモチーフの選び方だとはいえ、1.5cm間隔で打たれた3142本の釘が刺されたイメージが、他ならず肖像画であったこと、しかもご両親である事実に対して、思わず「痛み」を感じ、感覚的に反応してしまった。審査後、コンセプトの明瞭さ、そして最終的に表現しようとしたイメージを浮かび上がらせることに成功した点を考え、もう少し評価すべきだったと反省しながら、作者のウェブページを再度訪れてみた。異なる画像を選ぶと、高解像度の画像がアップロードされる合間に画面のピクセルがどんどん細かくなって、最終的には糸の重なりになっていくことがおもしろい。制作プロセスに関する説明は簡潔だが、機械にはできないこの手作り作業にかかった時間と努力は言葉では説明できないほどものだったはずだ。

    馬 定延(マ・ジョンヨン) メディアアート研究・批評
  • コンピューターでイメージを表示する時、ドットを集積するラスター画像と、線を集積するベクター画像の大きく分けて2つのアプローチによって表現される。本作は、グリッド上に配列した釘に5色(色の四原色+白)の糸を細かく大量にかけることで、写実的なイメージを表現していく。この手法によってもたらされるイメージはデジタル画像ではないにも関わらず、矩形をベースにしているという点でラスター画像を思い起こさせるし、一方で張り巡らされた糸がイメージを作るという点でベクター画像を思い起こさせる。そうした既知的とも未知的ともつかない中間的な質感を感じさせるのが本作の魅力で、なにか新しいデジタル画像の形式が再発明されるような、デジタル画像の存在原理に揺さぶりをかけてくるような気配も感じさせる。

    渡邉 朋也 作家
  • CMYKと限定された糸によって絵を描くというアイディアが面白い作品でした。実物はまだ見れてはいませんが、糸を釘に引っ掛け重ねていく事による立体感を感じる作品であると思います。是非正面だけではなく角度を付けたものを実際に見てみたいです。作品は立体物の作品ですが、WEBによるプレゼンテーションで試行錯誤や制作過程の部分もどん欲に作品に取り込む姿勢も評価が高いです。RGBの三色で作った物も比較対象で見てみたくなりました。

    小村 一生 プロデューサー/ワンオアエイト
  • 立体的な見方や時系列を感じさせる奥行きある表現が、他の動画作品とまた違った動的な作品として捉える事ができる。完成作品のみならずウェブサイトにおける作品の見せ方も含めての完成度も非常に高く、メイキングも含めて作品を楽しむ事ができる。色彩の構造を再度見直したその行為には新しい発見と可能性を感じた。

    谷口 充大 ディレクター/テトラ