市澤さんにバツの話を聞く

映画|2014

山内 祥太

東京藝術大学大学院

CAMPUS GENIUS BRONZE

作品Webサイトhttp://shota914-02.tumblr.com/

審査員コメント

  • 奇跡が生まれるバランスについて教えてくれる作品だ。謎のバツ印そのものと、それに関わるあらゆる要素・人間たちとのあいだの距離感が、あまりにも絶妙すぎて、いい意味でエアポケットに落ちている。何気ない日常を過ごしているだけでも、ときおりこんなふうな奇跡が起こってしまうことがありえるのだと勇気が出る。別にそれをあえてしようと思わなくても、知らないうちに、そういうことをしてしまっていて、もしくはなってしまっていて、そして(これはかなり大事なことなのだが)それを発見できる人がいるんだ、という事実が頼もしい。世界にまだ秘境は生まれうるのだ。

    土居 伸彰 アニメーション研究・評論
  • もしもし、あの作品見た?どうだった?(笑)私はね、日常の隅々まで届いている作者の暖かい目線と、市澤さんの文法無用の愛おしさに(笑)、なんと言うか、心の温度が1度上がっちゃったの。ねぇ、本当に素敵なことだと思わない?私たちの世界はこのような小さくてやさしいコミュニケーションに満ちているの。そう、バツは関係ないのよ。そう、バツは何でもないの。

    馬 定延(マ・ジョンヨン) メディアアート研究・批評
  • なにか個人的に気になることがあったから、そのことを調べて、分かったことを人に知らせる。この作品で展開していくのは、そんな単純なプロセスである。しかし自分はそこに、大きなポテンシャルを持った事物の誕生に立ち会った時の尊さ、愛おしさ、緊張感を感じてしまう。つまり、この作品にあるのは、テレビや映画といった映像メディアから発信される情報がまとう装飾の数々を、限界まで剥がした先の〈ありのまま姿〉だと思うのだ。あるいは、ただの映像がテレビ番組や映画作品へ歩みを進めようとする〈始まりの姿〉とも言えるだろうか。現在、多様な創作の領域で起こる全体性の回復、その恩恵として片付けてしまうにはあまりにも巨大な、奇跡のような作品だと思う。

    渡邉 朋也 作家