Gray Switch

Gray Switch

ガジェット|2018

油井 俊哉 横田智大, 北澤優也, 塙克樹, 早稲田大学橋田研究室

早稲田大学

スイッチは押す/押さないという2択の選択肢を提案する。 しかし、人の意志は0/1で割り切れないこともある。そのため、スイッチの前では自分の曖昧な気持ちを0か1のどちらかに振り切らなければならず、苦痛に感じる人も多いだろう。これは、人が無理に機械に合わせている状態だ。けれども、本来は機械が人に寄り添うべきなのではないだろうか。そこで、すでに蔓延した0/1のスイッチを人の気持ちに合わせられる0~1へと矯正する装置を制作した。この装置はスイッチに中間の選択肢ができるよう、押される確率をユーザが変えられる機能を加える。どうでも良い選択時や決断を迷った時、神頼みをするように選択を機械に任せられることも可能である。本作品では現在日常的に使われている主な数種類のスイッチをハックした。スイッチをグレー化することで、機械全体やスイッチを押した先の行為もグレー化されていくのではないだろうか。

審査員コメント

  • 特に電子工作やハードウェアハッキングなど、マイクロコントローラーのようなデジタルメディアを用いてフィジカルに表現する領域で、「0」か「1」の2択ではなくその中間の階調領域を表現したいという問題は、初学者にとって最初に待ち構えているハードルだったりする。理論的には0と1しか表現できないそれらの計算機は、どうにか工夫して人間の知覚可能な解像度とスペックの範囲で、白か黒ではなく、階調を持ったグレーを表現する。そのようなどこまでもアナログな存在である人間と、あくまでデジタルな存在であるコンピューターの関係性を浮き彫りにするような作品であると感じた。一見して非常にデザイン的なアプローチの整った作品の見せ方だが、実際のところは冗長的で、役に立たないナンセンスな道具であるという点はアート的で、そのコントラストも良い。

    やんツー 美術家